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投手・ケガをしない体のつくり方

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〔2014年2月8日 名護のブルペンにて〕

2014年4月2日、ファイターズの上沢直之(うわさわ・なおゆき)投手が、プロ初登板初先発初勝利を挙げました。6回3安打1失点、先発投手として、しっかり役割を果たしての1勝です。

上沢選手は、高卒3年目。ファイターズは、焦らず・無理をさせず、じっくりと育成に力を注いできました。初の一軍キャンプ参加となった2014年のプレシーズン、実戦での結果を積み上げてきて、満を持しての一軍初先発。本番での一発回答(快投)、勝利という結果が出たことを、非常に喜ばしく思います。


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私がキャンプ中に見た上沢選手です。厚澤投手コーチの指導の元、投球フォームを固めていました。投げ終えた後。肘の上げ方、テークバックの位置などを確認していましたね。キャンプ中の報道では「肘を柔らかく使い、真上からしなやかに腕を振り下ろす」という風に、表現されていました。

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身長187センチと、上背があるので、この角度から速球を投げ下ろされると、打者から見ても迫力があるのだろうな、と思いました。

さて、上沢選手が勝利したことで、彼にまつわる様々なエピソードが報道されたのですが、その中で、最も気になったのが、こちら。

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/04/03/kiji/K20140403007902450.html

スポニチの記事より引用。

上沢の野球歴はまだ8年。小学生の頃はサッカーと水泳に没頭し、中学から野球を始めた。この日、バックネット裏で観戦した父・和也さん(54)は磐城(福島)の元エースだったが、立大進学後に肩を壊し野球を断念。「小さい頃に入れ込んでケガをさせるのが一番嫌だった」。自身の経験から、他のスポーツをさせることで脚力や柔軟性を養わせた。

 その思いは栗山監督も同じだった。昨季終盤には1軍昇格も検討された。だが、栗山監督は「使いたくても上で先発させなかった」と育成に力を注いだ。3年目で初めて1軍キャンプに呼ばれ、好結果を残し続けて開幕ローテーションの座をつかみ取った。

(引用以上)

小学校までは、別のスポーツをして、脚力や柔軟性を養わせた~
お父さんが投手としてケガをされた経験から、将来を見据えて、ケガをしないように気遣われていたんですね。

もう一つ、気になった記事を見つけました。

http://www.bunya.ne.jp/news/kashiwa/%e5%8d%83%e8%91%89%e7%9c%8c%e5%86%85%e3%81%a7%ef%bc%92%e4%ba%ba%e3%81%8c%e3%83%89%e3%83%a9%e3%83%95%e3%83%88%e6%8c%87%e5%90%8d%e3%80%80%e4%b8%8a%e6%b2%a2%e7%9b%b4%e4%b9%8b%e6%8a%95%e6%89%8b%ef%bc%88.htm


東葛まいにちの記事より引用。

「指先は器用だが、足腰がしっかりしていないのでコントロールが悪かった。体が柔らかく、体格的(タテヨコ)にはしっかりしていて素材はいい。足腰を鍛えればプロ入りできる」と評価した持丸監督。

厳しい練習が始まった。それに応えた上沢投手は、2年の春頃から徐々にプロに対する思いも強くなっていった。ランニングはいつも1番で帰って来るなど、練習にも力が入った。

(引用以上)

高校時代の監督さんから、「指先が器用・柔軟性はあって素材はいい」と評されていたようです。水泳をやっていたのなら、全身運動になるから、手足のいろんな関節や筋肉を動かすし、柔軟性が養われるのかな、と想像しました。

◆◆◆

高卒で入団した長身の投手、ストレート・変化球とも良いものを持っている。
上沢選手がキャリアを積み上げる上で、比較されるのは、ダルビッシュ投手でしょう。

ダルビッシュ投手がファイターズに在籍していたときは、長期離脱を余儀なくされるような、肩・肘の故障をすることが、ありませんでした。高校時代の監督さんの証言があったのですが、高校1年目は監督さんの方針で、「柔軟体操とプール・トレのみ」しか、行わせなかったそうです。

ダルビッシュ有の変化球バイブル』P67より引用。

ダルビッシュに待ち受けていたのは、両ヒザの成長痛だった。
「無理をすると、疲労骨折しやすい。1年間は何もさせないでおこうかな、と思った。1年目は柔軟体操とプール・トレーニングしか、させてない。体重移動をスムーズにする。つまり、下半身の力を上半身へ伝えるには、股関節の柔軟性が大事なんです。下半身を使えれば肩、ヒジを痛めることはない。09年メジャーで故障者リスト入りしたある投手は、上体だけで投げている。肩を痛めた結果、かばううちにヒジにも併発、その繰り返しです。ダルビッシュとの違いは、股関節をうまく使えているか、という点に尽きます」
選手寿命を縮める故障を恐れていた若生監督は、成長痛が完全に癒える3年春のセンバツ前まで、下半身に負担のかかる「陸上メニュー」はすべて回避。ダルビッシュはこうした「特別扱い」を何より嫌ったが、指揮官のこの親心が基礎を作り上げたことは言うまでもない。

(引用以上)

陸上トレ(=走り込み)ができなかった分は、水中での週3回、2時間のスイムトレでカバーしていたとのこと。ダル君の股関節の柔軟性は、まだ15歳の頃、来る日も来る日も、柔軟体操を繰り返していたことで培われたのだと、わかりました。
下半身がしっかり使えていれば、肩肘の故障を起こさない。
この論理に、非常に合点が行きました。

「体格に恵まれた」という表現を良く聞きますが、その体格をうまく生かしていくためには、相当の努力が必要になるんですね。正しい知識を持って、負担のかかり過ぎない強度でトレーニングを行う。

体が大きい分、本当に、”できあがる”には時間も要します。

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上沢選手が今まで努力してきたことが、大きな成果につながりますように。
今シーズン、ケガすることなく、投げ続けてくれることを願います。