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ファイターズ・高卒野手の育成について

〔はじめに〕
ファイターズの高卒3年目の石川慎吾選手が2014417日に一軍昇格しました。今後、一軍定着できるかどうか? に注目しています。近年、ファイターズでは、高校卒業のキャリアで獲得した野手の選手が、入団3年目を目安に、一軍定着している事実があります。どういう意図・考え方のもとで、育成が行われているかについて調べてみました。

〔ファイターズ・チーム編成の考え方〕

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(『日経情報ストラテジー』20087月号「北海道日本ハムファイターズ連覇を演出した情報システム」の記事を元に、画像作成しています)

 

まずは、ファイターズのBOS(ベースボールオペレーションシステム=選手の能力を数値化し、チームにおける立ち位置を分類するデータベース)の概念を、簡単に説明します。

上の段は、一軍に属する選手(レギュラーor控え)
下の段は、一軍に属さない選手(育成or在庫)

チーム全体の保有人数(ファイターズでは65人を目安としている)の枠は決まっていて、
年俸やその他諸経費の予算にも、限りがあります。

目指すのは「限りある予算」を効率よく振り分ける、チーム編成。

1、常に試合に出る「レギュラー」
(FAなどで流出可能性あり、補充が必要になる。
年俸が高騰化するとチーム編成上、バランスが崩れてしまう)

2、レギュラー選手を一軍で支える「控え」

(このゾーンの選手が試合に出る割合は7%とファイターズは独自に計算、投資効率を考えて編成)

 

3、将来一軍で活躍できるように育成される「育成」

(「レギュラー」「控え」へと供給できるよう、早い段階から試合を経験させる。数年先を見据えて獲得を行う)

4、1・2・3いずれにも属さない「在庫」
(厳しい言い方ですが、このゾーンに年俸の高い選手がいると、BOS上、効率的ではないと判断。故障などで戦力に加味できない場合も含む。回復を待ち保有するか、放出するかなどの判断が必要になる)

現時点で、どこのゾーンにどれだけの選手がいて、必要数からの過不足が生じていないか、検証されます。場合によっては、「移籍」も活用。しかし、FA等で、抜けてしまう戦力を補うのに、最も効率が良いのは、自前で若手選手を育てて、一軍の戦力とすることです。

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今回、ピックアップするのは、「育成」ゾーンから、一軍への供給スピードについて。
特に、近年の高校卒業のキャリアで獲得した選手たちが、入団2-3年目の早い時期から、一軍で出場しているのを見て、興味を持ちました。

『日本ハムの強さの秘密。常勝の礎を築いた「7パーセント」のこだわり』

石田雄太さんの、20121027日のコラムの内容が、非常にわかりやすかったので、リンクさせていただきます。

 

山田GM「ウチは獲った後、一定のレベルに達したら、ファームのレギュラーとして1年間、使うという方針。打てる、打てないに関係なく、1年間、ファームのレギュラーとして試合に出る力のある選手だけを獲る」

 

予算内で選手を獲得し、獲得した選手に早くから実戦経験を積ませて効率よく育成し、戦力として計算した上で一軍へ送り込むシステムができあがっている

 


〔獲得した選手は、1年間、ファームのレギュラーとして試合に出場させる〕

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 [NPBのHPより、ファイターズ高卒野手1年目のイースタンリーグ公式戦の出場成績]

2005年以降のイースタンリーグ公式戦記録が残っていたので、過去の高卒野手の初年度のみを拾いました。(いちばん左は入団年度)かなりの打席数を1年目から経験させていることが、わかります。

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 [同、高卒野手1~3年目のイースタンリーグ公式戦の出場成績]

2008年以降入団の、高卒野手(大谷選手を除く)どの選手についても、1年目から、概ね200打席以上を経験して、2年目、3年目と成績も上げていっています。少数精鋭で育てているからには、成長速度も速くなってもらわなければ困る、という事情もあります。

 

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[同、2008年以降入団の高卒野手の2013年までの全一軍出場試合数、打数、安打数、打率]

2014年5月6日現在、松本剛選手以外の、6名は、現在、一軍登録されていますね。ファームで十分鍛えて、一軍に上がったときに、すぐに目覚ましい活躍ができるかといえば、それは、やはり難しいことなのでしょう。

一軍の試合でしか学べないこと、一軍の試合に出ることで成長できる部分、というのはあるはずです。

今季、そして将来に渡って、どの選手がどれだけ伸びるのか、注目したいです。